てぬぐいってハンカチやタオルとどう違うの? そんな風に思われる方も多いかもしれません。しかし、伝統的なてぬぐいは素材やサイズ、染め方がほぼ決まっているんです。ここではてぬぐいの基本的なことについてご紹介します。
てぬぐいは、顔や手を洗った後の水をぬぐったり、お風呂で体を洗ったりする時に使われる平織り布のことです。その歴史は平安時代からとも言われ、昔は祭の装身具として使われてきました。江戸時代に入ると、庶民の暮らしに広く取り入れられるように。「手をふくのによい布」から「てぬぐい」という名前がつけられ、多くの人に親しまれるようになりました。
てぬぐいの素材は上質な木綿100%。肌ざわりがよく、吸湿性、速乾性にすぐれています。生地は太めの糸でざっくり織った「文」と細めの糸で細かく織った「岡」の2種類があります。
「文」生地は目が粗く触感は固めですが、通気性と吸水性が高く、剣道の面手ぬぐいなどの汗をかくスポーツや踊り、台所での布巾や掃除など、普段使いの用途にピッタリです。
「岡」生地は、目が細かく触感は柔らかでしっとり。染料のノリも美しく、デザインにこだわったてぬぐいをつくることができるため、インテリアのアクセントやプレゼントにもおすすめです。
▲季節に合わせて飾るのも素敵ですね(画像提供:株式会社ナカニ)
タオルやふろしきはさまざまなサイズのものがありますが、てぬぐいは幅が33〜38cm(一尺)、長さが90〜95cm(3尺弱)と、大きさがだいたい統一されています。なぜなら、もともと浴衣用の生地から生まれたものだから。
タオルやハンカチよりも長さがあるため、家事や農作業はもちろん、伝統芸能、祭、剣道などのかぶり物からアウトドアまで幅広い用途で使われています。
伝統的なてぬぐいの染め方には、「捺染(なっせん)」と「注染(ちゅうせん)」があります。
「捺染」は顔料や染料を直接生地に刷る、昔からの伝統的な染め方です。一色につき型を一つつくり、繊維の表面に色のり(染料とのりが混ざったもの)を刷り込みます。
捺染の特徴は、大量生産に向いているということ。また、表面から染色し、生地の裏側まで染料が浸透しないため、表面と裏面のあるてぬぐいができます。耐久性と肌触りに優れ、繰り返し洗濯しても色落ちしにくく、布そのものの手触りを楽しむことができます。
▲こちらは捺染のなかでも円柱の金型を使って染める「ロール捺染」という技法
「注染」は生地を染料で直接色づけする、明治時代の頃から広まった染め方です。染色したくない部分には特殊なのりで土手をつくり、あらかじめ防染します。こうすることで、土手で囲った部分に染料を注いでもほかの部分が染色されることはありません。
注染の特徴は、一度に多色を使って染めることができるのと、裏面まできれいに柄が染まること。色落ちによるグラデーションや使い続けることで出てくる独特の味を楽しむことができます。
▲注染は土手をつくり、何色も使い分けながら染めていきます
てぬぐいは両端が切りっぱなしになっているので、使っているうちに糸がほつれてくることがあります。なぜなら端を縫っていないので乾きが早く、汚れやホコリがたまらず衛生的に使うことができるから。また縫い目がないため、切って使う時などにも扱いやすく便利です。
新品のてぬぐいは最初のうち両端からほつれて糸が出てきますが、何度か洗ううちに落ち着き、端から1cm程度で自然に止まるのでご安心を。洗ってほつれたら、長く出た糸だけを切って使いましょう。
▲使い込んでいくうちに、やわらかな風合いに変化していきますよ
柄を楽しんだり、実用的に使ったり、さまざまな活用法があるてぬぐい。
暮らしのなかに取り入れてみると、その使いやすさにきっと驚くはずですよ。